ゾンビ屋れい也 リルケ編4


リルケに囚われてから、れい也に外へ逃げ出す術はなく共に居城で暮らしていた。
紋章の力を封じる布は取られているが、状況は変わらない。
リルケに勝つ方法は、また百合川に命を捧げるしかない。
それ以前に、どこの辺境地かわからない場所で一人になるのは得策ではなかった。

「おい、れい也。今日は外に連れてってやるよ」
何の気まぐれか、れい也は訝しむ目でリルケを見る。
「そんな目するんじゃねえよ」
リルケはれい也に近付き、さっと目隠しを着けさせる。
何かひどいことをされる気がして、れい也は緊張した。

「帰り道が知れたらまずいからな。このまま翼竜に乗って行くぜ」
リルケは翼竜を呼び出し、れい也の腕を引く。
これは逃げ出す千載一遇のチャンスだと、大人しくしていた。


翼竜の翼の音が止み、地面に着地する。
目隠しを取られた場所は、どこかの倉庫だった。
地面かと思った場所は積み上がった荷物の上で、下の方にはガタイの良い男衆がうろうろしている。

「何なんだ、ここ」
「麻薬やらヤバいもんの取引所だ。たまには暴れねえと体が鈍るからな」
リルケは荷物の山から飛び降り、男の背後に静かに着地する。
そして、剣をすらりと抜き一発で首を刎ねた。
悲鳴を上げる間もなく、鮮血が吹き出し首がごろりと転がる。
血の匂いに気付いたのか、他の男が駆けてくる。

「何だ、テメ・・・」
男はリルケに銃口を向けたが、とたんに翼竜が飛び降り目玉を突き刺す。
激痛の叫び声がこだまして、完全に侵入者が発見された。

「れい也、お前も下りて来いよ!なあに、コイツ達は極悪非道な人間のクズ、何の罪悪感も感じることねえんだぜ!」
リルケは、意気揚々と倉庫の奥へ駆け出す。
逃げ出す良い機会だとれい也は辺りを見回したが、その前に男が自分の方を指差した。
ここにいてはいい的だと、地面に降りる。
「百合川!」
まずは安全確保だと、れい也はシキを呼び出し戦闘態勢に入った。


倉庫内に、血の匂いが充満する。
れい也は一切手をかけず、戦闘は全て百合川に任せきりだ。
相手は暴力的でも、銃を持っていてもやはり人間で
打たれても殴られても死なないゾンビ相手には敵いようがなかった。
あらかた悲鳴も聞こえなくなったところで、出口を探す。
その道中で、震えて立ち尽くしている男と出くわした。

「ひっ!た、助けて・・・」
血塗れの百合川を見て、男は露骨に怯える。
相手は、まだ成人していない、自分と同じくらいの少年だった。
拳銃も持っておらず、ただの下っ端のように思える。
百合川は切りかかろうとしていたが、れい也が手をかざして制する。

「出口はどっちか、教えてくれないか」
「で、出口・・・それなら、こっち」
少年が指差したとき、人差し指が鋭利な刃物で切られて飛ぶ。

「い、いぎゃああああ!」
少年は尻餅をつき、必死に指を押さえる。
「なーにやってんだよ、コイツ達は皆殺しにしてもいい奴等だって言ったよなァ?」
百合川以上に血にまみれたリルケが、高揚感を抑えきれないように笑む。
まさしく悪魔の嘲笑に、れい也は寒気を覚えた。

「ほら、一人くらいお前が殺ってみろ」
リルケが、れい也の方へ剣を放る。
床に落ちた真っ赤な刃から、思わず目を逸らす。

「ハッ、情けねえ奴だ。そんなんじゃすぐに死ぬぜ」
リルケはナイフを取り出し、何の躊躇いもなく少年の首へ突き刺す。
少年は吐血し、ものの数秒で絶命した。

「・・・僕には、シキがいる」
「全部ゾンビ任せで生き抜いていけると思ってんのか?俺等は、そんな生易しい境遇じゃねえだろ」
リルケの言葉は一理あり、れい也は黙る。
以前にも、ヤクザ関連の仕事で殺されかけたことはあった。
そのときは百合川一人で処理できたが、もっと大勢いれば危なかっただろう。
そんなとき、自分も戦えれば生存確率は確かに上がる。

「俺様なんて、5歳の頃には血の味を覚えてたぜ。お前はいつまで経っても臆病者の甘ちゃんのまんまかよ」
「お前みたいな気狂いと比べられたくない」
気に障ったのか、リルケはれい也の手を捩じ上げる。
どろりとした血の感触と鉄臭さに、眉をひそめた。

「自分は弱い相手に情けをかける聖人君子ってか?
自分で殺すか、ゾンビに殺させるかだけの違いだろうが。
耳が痛くて、れい也は俯きがちになる。
本当のことを言われていると、頭のどこかで理解しているからだ。

「お前の手は俺と同じ、とっくに血で染まってんだ。お前はただ、目を逸らしたがってるだけの臆病者なんだよ」
リルケは、れい也の首元を掴みべったりと血の跡をつける。
それは、まるで呪縛のように首を絞めつけていた。

「さて、と。仕事は終わりだ、さっさと帰るぜ」
翼竜が、口にアタッシュケースをくわえて着地する。
中には、報酬が詰め込まれているのだろう。
リルケはれい也にまた目隠しをし、翼竜に乗せる。
先の言葉が呪いのように耳に残り、れい也は逃れる気力を削がれていた。


城へ戻ると、リルケは早速浴場へ向かう。
腕を掴まれたまま連れられ、れい也はたまらず足を止めた。
「・・・僕は後でいい」
「ああ?そこらへんに血痕つけられたら迷惑なんだよ。さっさと洗っちまえ」
言い出したら聞かず、リルケはれい也の服に手をかけようとする。
思わず払い除け、すかさず距離を取った。

「子供じゃない、自分でする」
服を脱いでいる間、じっと視線を感じる。
逃げ出さないように監視しているのだろうけれど、この兄はとんでもない欲望を抱いているのだ。
絶対に目を合わせないようにして、れい也は浴室に入った。

危険な相手の前で無防備な状態でいるなんて危険でしかないと、れい也は急ぐ。
シャワーを全開にして血のぬめりを洗い流し、匂いを拭う。
だが、首の血がなかなか跡が取れなくて焦っていた。

「血の匂いがそんなに嫌かァ?ま、いずれ興奮するようになるぜ」
リルケの腕や胸元は、全て返り血かと疑うくらい赤い。
れい也は一瞬、その姿を凝視していた。
こんなにも鮮血に濡れた姿が似合う相手は、そうそういないと。

リルケの血が洗い流されると、れい也ははっとして遠ざかろうとする。
そうして、一瞬油断した隙にリルケはれい也の肩に腕を回して引き寄せた。
固い胸筋が背にぶつかり、体が硬くなる。
「ゾンビ帝国の一員になるんなら、お前の甘さをなんとかしねえとな?」
耳元で囁かれ、れい也はリルケの腕を振り解こうともがく。
だが、体格差は明らかで、筋肉質な腕はびくともしない。

「生まれ持った性質はあるが、そんなもんは後からどうにでもなるもんだ。
前に、お前のナカには俺の種を注いでやったよなァ・・・」
蹂躙されたことを思い出し、れい也は身震いする。
忘れられない、生々しい感触。
切り傷の次は、精神的にも刻み付けられた。

「今度は、下からじゃなくて上からも取り込んでみろよ」
「どういう、意味・・・」
問いかけた瞬間、足をひっかけられてれい也は床に転ぶ。
体を仰向けにされ、リルケがその上に乗り上げた。

「今度は俺のを咥えて、飲んでみろって言ってんだよ」
とんでもない発言に、れい也は目を見開く。
リルケは構わず、自身の下半身をれい也の顔へ近付けた。

「だっ、誰がそんなことするか!さっさとその汚らしいものを退けろ!」
れい也は顔を背け、閉口する。
リルケのものは、すでに固く太くなっていて
一体何がきっかけでこんな状態になるんだと、泣きそうな気持ちになっていた。

「なあに、お前にもちゃんとイイ思いさせてやるからよ」
れい也の視界の外で、リルケが動く。
退いてくれるわけではなく、体制を変えただけだ。
直視しないようにしていると、自分の下半身に息がかかる。
まさかと思い下方を見ると、リルケが中心のモノへ口を近づけていた。

「な、何、して・・・」
リルケの舌が、その個所へ這わされる。
「ひ、っ・・・」
柔らかなものが触れ、れい也は震える。
舌の広い部分が体を這いずり回り、歯を食いしばった。

また、無理やり欲情させられる。
リルケは何の抵抗もなく、まだ萎えている性器を弄っていく。
お湯とは違う液体でぬるりと濡れ、れい也は思わず息を吐いた。
そのとき、リルケが腰を落として自身の身を近づける。
れい也はとっさに口を閉じ、断固として拒否していた。
続けて、リルケはれい也のものを口に含む。

「う、うっ・・・」
口内へ誘われ、リルケの唇がそれを食む。
食いちぎられてしまう恐怖心はあったが、先端に舌が触れると声が出そうになってしまう。
弱い所を探すように、リルケはまんべんなく弄っていく。
身が徐々に深く咥えられると、れい也の体内に熱がくすぶる。
思い切り息を吐いて深呼吸したいところだが、リルケはきっと機会を逃がさないだろう。

「チッ、いい加減口開けて喘ぎやがれ」
いらついた様子で言うと、リルケはれい也のものに歯を立てた。
「あ・・・!」
痛みと快楽が入り混じり、動揺した声が出る。
しまった、と思ったが生理現象には逆らえない。
リルケはすかさず自身の身を落とし、れい也の口へ押し付けていた。

「んぐ・・・!」
無理やり口が押し広げられ、リルケの肉が入ってくる。
後ろへ引くこともできず、熱を帯びたものが舌に触れた。
気が動転して、どうにも動くことができなくなる。

「おい、お前だけイイ思いするつもりかよ。さっさと弄ってみろ」
リルケは、再びれい也の身に歯をたてる。
「んんっ・・・!」
痛みが強まり、れい也は怯む。
食い千切られる恐怖心が増し、れい也は嫌々舌を動かした。
既に熱を帯びている身に、おずおずと触れる。
ひどい味はしないものの、独特な肉の感触に顔を歪ませた。

動きを見せたことをよしとしたのか、リルケは行為を再開する。
早く欲を出せと言わんばかりに、れい也の先端を舌の広い部分でじっとりと弄った。
「う、う・・・っ」
先の方はひときわ敏感で、れい也はくぐもった声を発する。
それを聞き逃さず、リルケは舌先で欲の出口に触れる。
穴を押し広げるように強く押し付けると、その身が驚いたように脈動した。
はずみでれい也の舌が動き、リルケのものに押し付けてしまう。
呻きを上げるたびに、結果的に肉を弄ってしまっていた。

「へえ、ココがイイんだな?なら、望み通り触ってやるよ」
弱い個所を見つけたリルケは舌なめずりをし、先端を咥えてふいに吸い上げる。
「あ、ぁ・・・っ!」
口の隙間から、抑えきれない喘ぎが漏れた。
リルケが攻め立てるほどれい也の口内が動き、お互いを高揚させる。
リルケは欲求のままに激しく弄り尽くし、わざと唾液の音をたてる。
早急になった行為に、昂りはしきりに脈動し絶頂に近付く。
そして、仕上げと言わんばかりにリルケはれい也を急激に吸い上げ、出血しないギリギリの力で歯を立てた。

「ん・・・!あ、あ、んんっ・・・!」
痛みを伴う刺激に、れい也は耐えられない。
抑えようもない欲望が、成すすべもなく放出されていた。
それは全て、リルケの口内におさめられる。
れい也の欲を己の舌で味わい、リルケの高揚も最高潮に達する。
達して、高い喘ぎを発したとき、れい也の歯が肉に当たり
白濁を飲み干した瞬間、己のものも強く脈打った。

「うう・・・っ!」
舌の上に、嫌な粘り気を帯びた液体が散布される。
とたんに、鼻につく匂いと卑猥な感触が、一気に口内に広がった。
リルケが息を吐き、れい也の口から自身の身を抜く。
れい也はとっさに白濁を吐き出そうとしたが、それより早くリルケが口を掌で塞いだ。

「飲めよ、れい也ァ・・・。何のためにしてやったと思ってんだ」
行為の後で脱力しているのは同じはずなのに、掌を退かすことができない。
舌の上には濃い体液が溜まり、喉元へ流れ落ちていく。
だが、粘り気が強くてとても飲み込む気になれず、れい也はリルケを睨んでいた。

「何だ、一人じゃ飲めねえってか?仕方ねえ奴だ」
リルケは掌を退けると、すかさずれい也と唇を重ねる。
「う・・・っ」
リルケの舌が口内へ進み、自分の体液を中へ中へと押し込む。
さっきまで同じものを含んでいたせいで匂いはさらにきつくなり、れい也はむせかえりそうになる。
舌を押され、口内に液体の味が広げられていく。
もう耐えられないと、れい也は意を決してリルケの白濁を飲み込んだ。
喉に絡みつき、顔をしかめながらも数回嚥下する。
全て飲んだのを確認すると、リルケはようやく身を離した。


「最初から、素直にそうしてりゃあよかったんだよ」
リルケは満足げに笑み、れい也を見下ろす。
「最悪・・・最悪だ、こんな・・・気持ち悪い、異常性欲者・・・」
飲み干した後も、まだ味が残っている。
胸のむかつきを感じ、れい也は終始渋い顔をしていた。

「ハッ、お前はいずれそんな異常者のことしか考えられなくなるけどな」
「そんなこと、あるわけないだろ・・・!」
「じゃあ、何で途中でゾンビを呼び出さなかったんだよ」
その言葉に、れい也ははっと目を見開いた。

以前とは違い、手に赤い布は巻かれていない。
それなのに、途中で百合川を呼び出すことを忘れていた。
呼び出しても殺せないから、口を塞がれていたから、気が動転していたから。
様々な言い訳が、頭の中を駆け巡る。
リルケはれい也の体を起こし、自分の側へ引き寄せる。

「認めろよ、俺を求めてるってこと。
体が欲しがってんだろ?初めて知った欲を、もっと与えてくれってよ」
「ち、違う・・・そんなわけ・・・」
必死に否定したいのに、声が弱くなる。
まるで、心と体が乖離しているようだ。

「何なら、もう一回シてやろうか?
今度は器具なんて使わねえで、俺の指で解してイかせてやるよ・・・」
れい也は、反射的に身震いする。

「も、もう、無理だ・・・したばっかりなのに・・・」
「なら、時間置いたらイイってことか」
「違う・・・!」
からかっているだけなのか、リルケはにやにやと笑っている。

「まあ、全部飲めたご褒美だ。今日はこれくらいにしておいてやるよ」
リルケはれい也から離れ、浴槽に向かう。
解放されたれい也はすぐさま洗い場に行き、全力でうがいをした。
絡みついた味は、なかなか消えない。
吐き出して、なかったことにしてしまいたかった。
リルケの欲を飲み込んでしまったことも、最後まで事を許してしまったことも。